ToshiYasuiBlog

慶應義塾大学大学院システムズデザイン・マネジメント研究科の教員である筆者が、ポストシステム思考・ポストデザイン思考の研究教育のさまざまな試みを自省しつつ、日々の振り返りとして書きつづる

政治学における制度をシステムとして比較すると見えるもの

Hijino先生

慶應SDMの春学期の土曜日は隔週で、「社会システムのシステムズ・アプローチ」の講義。社会システムはカバレッジが広いので、多くの先生方に講義していただく試みを行っています。6/22土は、比較政治システムがご専門の、慶應SDMのヒジノ先生

アクター間の利害対立、制度と規範、政治システムの構造などの基本概念をカギに、政治システムを学術的に比較する楽しさを、豊富な実例を挙げながらご講義いただきました。政治学をシステムズ・アプローチから分析することの興味深さを学生たちは堪能しました。

フランシス・ローゼンブルスらの新制度学派による日本の政治システムの分析など、1990年代から日本の実証研究の蓄積が注目されています。政治学における社会システムを比較していくことで、社会システム論のアプローチが政治学にも有効に機能することを熱情を込めてご講義いただきました。ヒジノ先生、ありがとうございました。






  1. 2013/06/22(土) 15:50:22|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

北の大地にイノベーションのタネをみなで播きました

Photo1

30人を超える有志が初夏の快晴にもかかわらず集まりました。6/15土の午後。北海道の私学の雄、北海学園大学の「法学部カフェ」。

ワールドカフェをほうふつとさせる、この「法学部カフェ」の記念すべき第20回に、カフェ店長こと法学部長の樽見先生にお呼びいただいたのでした。素晴らしいモチベーションで、アイスブレーク、ブレーンストーミング、親和図法へと進みます。

Photo2

ブレーンストーミングで思わず笑みがこぼれ、爆笑となったテーブル。このフロー状態が、イノベーティブなアイデアを生むのですね。

Photo3

「あったらいいな、こんな大学」をテーマにブレスト、そして親和図法へと進むと、発想は物理的な大学の枠をどんどん跳び越えていきます。

Photo4

大学と地域の協創は今一番旬のテーマ。慶應SDMが研究・開発をしてきた構造シフト発想法を使い、「北海学園大学2.0」を目指して、大学の目的、機能、コンポーネントの従来型の発想パターンにシフトをかけます。

Photo5

テーブルごとに選んだ「イケてる目的-機能-コンポーネントの組み合わせ」を、サラスらが70年代から実践していたプレイバックシアターの手法を使って表現。即興とイノベーションには、深い関係があるのです。

Photo6

この日のワークショップではなんと、大学の先生方もワークショップとスキットに積極的に参加していただきました。とてもとてもうれしかったです。「出前Open KiDS」として、無給ボランティアのでのお手伝いでしたが、参加された北の都の気鋭のリーダーの方々のアウトプットに、こちらが学んだことが多かった実り多き一日でした。素晴らしい設営と準備をいただいた樽見先生及び先生・スタッフのみなさま、本当にありがとうございました。


  1. 2013/06/16(日) 17:02:43|
  2. ワークショップ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

介護の迷信に挑むダイアログ

高尾先生2

慶應SDMの科目『社会システムのシステムズアプローチ』では、理論倒れにならず、社会システムの学術と現場をバランスよく学ぶため、きらりと光る外部の専門家の先生方に講義をときどきお願いしています。

6/8土の講師は、価値総研の高尾真紀子主任研究員。介護や年金は、国家財政やナショナルミニマムという超マクロでばかり議論されたり、あるいは、介護現場の疲弊と苦労という超ミクロに脚光があたりがち。高尾先生は、「鳥の目・虫の目」を行ったり来たりするように、マクロとミクロのバランスをとりながら、きわめて説得的に分析を紹介していかれます。

高尾先生は、介護、年金、少子化などの分野で、理論と現場の双方に精通する日本でも傑出されたご専門家のひとり。素晴らしいご研究とご経歴を持っていらっしゃるのだが、とても謙虚なお人柄で、温かく学生に接してくださるので、学生たちもとても身近に感じた様子。

高尾先生1

介護のように、「準市場」という、公的性格を持つ市場サービスは、高尾先生がこの本でお書きになっておられるように、要介護者と介護サービス提供者の間の情報の非対称性をいかになくしていくかがカギ。

慶應SDMは社会人学生が大半を占めるからでしょうか、実はこの日の教室の半数以上が、なんらかの介護体験を持っていました。そのせいか、学生たちは真剣そのものの表情で、講義に聞き入り、メモを取っています。これほどメモを必死に学生たちがとる講義は久しぶりでした。

高尾先生3

当初は、ブレーンストーミングや因果ループを使ったワークショップを高尾先生のご講義後に予定していましたが、学生たちのたってのお願いで、講義後は、それぞれの学生が付箋紙に自らの介護についての気づきを書き、それをもとに高尾先生と学生たちがダイアログするという、サンデル先生の白熱教室とワールドカフェを足したような形になりました。ワークショップを設計しているTAや有志学生さんたちのフレキシブルでスポンテイニアスな対応に、わたくしもうれしい驚きです。

高尾先生4

出席した学生たちも、自らの体験をもとに、日本の財政状況や地域差の話など、「介護の迷信」ともいえる数々の「思いこみ」にダイアログを武器に切り込んでいきました。

それにしても、わたくし自身もとても勉強になる貴重な90分間でした。介護施設やサービス付き高齢者住宅の顧客視点というか、ユニバーサルデザインはこの数年ぐっと進歩を遂げていて、お風呂や廊下、台所などでもイノベーションの嵐が起きているのだとか。そして、介護の需給は地域格差が大きく、東京の近郊はこれから介護では大変チャレンジングな状況になるのだとか、これまでいわば「介護の迷信」にとらわれていた自分自身の誤りを正すよい機会をいただきました。介護こそが、イノベーションの最前線なのですね。

高尾先生5

講義と対話の最後に、学生たちは思い思いの気づきを記した付箋紙を、黒板に貼り、高尾先生と対話を楽しんで、チェックアウトしていきました。なかには、上の写真のように、感激のあまり、なぜか「アベノミックス」という名のお茶菓子(旅行のお土産だとか)をお渡ししてしまう社会人学生もいて、教室は笑いの渦でした。高尾先生、素晴らしいご講義とダイアログを本当にありがとうございました。
  1. 2013/06/09(日) 16:41:13|
  2. 研究
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

Happiness is hard. So it's good for business.

Dr.NishimizuLecture1

「人生で変わらぬことはただ一つ。すべては変わるということだ」5/31金の夜も更けて。慶應SDMの特別講義。西水美恵子・前世銀副総裁の静かな、そして教室中を感動させたお話はこうはじまりました。

ブータンの前国王・雷龍王四世に謁見して以来、前国王を心の師と仰ぎ、教えを実践してきたのだといいます。前国王は、日本でも近年注目を集めている国民総幸福(Gross National Happiness: GNH)の発想者で、17歳の即位以来、トレッキングや民泊も重ねて高い山地にあるブータン全土を、国民と対話するために廻ったのだそうです。

西水さんは、前国王の教えにインスピレーションを受け、90年代後半にパキスタンの貧村に住み込み、現地の女性たちの苦しさを身を以て共有する研修を、自らも率先して体験するために始めます。世銀の真のクライアントとは、一日2回の水くみに山を上り下りで何時間もかけて行き、炊事のための薪あつめと子供の世話で一生を終えていくような、途上国の貧しい村のひとたちだからです。

この研修から帰った西水さんはこう宣言して、巨大な官僚組織でもある世銀改革に乗り出します。「あなたの知っていた美恵子はもう死んだ。ここにはいない。」リーダーが頭ではなく、身を以て本気を出さなければ、組織は変わらない。そう、西水さんは話します。

Dr.NishimizuLecture3


西水さんの静かで、しかし心の底からのお話に、何人もの学生がとまらぬ涙をぬぐっています。西水さんの卓抜のリーダーシップ論は最近出版されたされたこの本に詳しいですが、筆者が特に感銘を受けた西水さんの言葉のいくつかをここに記します。

「リーダーシップとはチーム精神を育むこと」
「チーム精神は飛び火する」
「さかさまになりなさい」(筆者注: つねに逆転の視点からものごとを考えなさいという意味にとりました。)
「何ごともリーダーシップの本気につきる」
「世界の優れたリーダーに共通なのは、心と心がつながりやすい、子供がそのまま大人になったようなひとだ」
「ひとはだれでもリーダーシップを持って生まれてくる。赤ちゃんをご覧なさい」

Dr.NishimizuLecture2

西水さんは、日本でも最近ありがちな、ブータンやGNHをただほめそやすだけの、ふわふわとした最近の一部の幸福論にも厳しい目を向けています。幸福という目的実現のためには、手段としての経済成長が必要。だけれど、手段としての経済成長が目的になってしまっては、幸福が実現しません。

もともと、ブータンのGNHそのものが、インドと中国という巨象に挟まれた小国ブータンの高度な生き残りのための安全保障戦略だといいます。西水さんの講義での言葉です。「Happiness is hard. So it's good for business.」わたくしなりのつたない訳ですと、「幸福を実現するのは、とてもしんどいことだ。だからこそ、それを仕事にするに値する。」

この混沌とする東アジアの情勢の下、社会システムのイノベーションを加速して、日本の価値を高めるという安全保障戦略をギリギリと本気になって、お前は取り組んでいるのか? まだ甘いのではないか? 腹の底からそう感じているのか? そう西水さんに問いかけられているように感じ、筆者の自省の日々が金曜日の夜から続いています。

上の2枚のサムネイルは、90年代にブータンで筆者が買い求めた2枚の絵です。いずれもブータンの伝統的なデザイン。上の絵は、動物たちが協力して木の実をとるという協創の絵。そして下の絵は、それぞれの花が曼荼羅というホリスティックな絵柄に通じていくという吉祥紋の絵と聞いています。

当時、筆者はインドに勤務。インドの辺地や貧困地帯で社会インフラを建設するためのファイナンスの仕事をしていました。西水さんと、当時ニューデリーでお会いした記憶がありますが、その日以来、約20年ぶりに再びお会いできたのでした。

担当国のひとつだったブータンにも何度か足を運びました。当時は何も考えなかったけれど、この2枚の絵を買ったことは、慶應SDMで研究したり教えたりしている価値協創や社会システムデザインへの「正夢」だったのかもしれませんね。ブータンという国が、20年のときを経て、わたくしを慶應SDMという現場に立たせてくれているのかも知れません。

西水さん、感動の講義を本当にありがとうございました。西水さんのご決心とはおそらく、万と一以上に違うと叱られそうですが、タテ割を打破して、横につなぎ、社会システムのデザインとイノベーションに本気で共感してもらえるよう、頭と心を同時に共感できる物語を語っていきたいと思います。



  1. 2013/06/02(日) 16:33:24|
  2. 研究
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

Dproサバイバルキット、各人に配布されるの巻

2013DproPh2-1_6

慶應SDMの看板科目「デザインプロジェクト」の第2フェーズが6/1土から、いよいよ始まりました。当科目は三つのフェーズから成り、4-5月に行った第1フェーズで学生たちは、'システム×デザイン'思考=イノベーションの基本的な考え方と、30余りのツールを徹底的にたたき込まれました。

第2フェーズはこれから1か月の間に、ボランティアで手を挙げていただいた企業等から、自社の抱える具体的な悩みや問題のプロポーザルをいただき、それを学んだ方法論とツールをすべて使ってみることで、まずは自分たちの力で学んだことが問題解決に実際に使えることを実践・実感します。

旧日本海軍の名将・山本五十六提督のお言葉をお借りすれば、「やってみせ、いって聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」のうち、第2フェーズは「やってみせ、いって聞かせて」から次のフレーズに移った段階でしょうか。この第2フェーズのあと7月からは、高度な応用で実際にソリューションやデザインを最適解に導く第3フェーズが始まります。

今年度は、運輸系1、通信系1、電機系1、インフラ系1+コンサル系1、ものづくり系1、金融系1、創業/社会デザイン系1、の計8社等7チームがボランティアのプロポーザーとして手を挙げていただき、慶應SDMの学生チームに任せたい問題の課題を出してくださいました。

2013DproPh2-1_1

チーム編成もユニークそのもの。2週間前に張り出された各企業等のボードに、各人が自己アピールとともに氏名を書いたポストイットを貼るのです。いわば、ガラス張りの合従連衡によるチーム調整。丁々発止の駆け引きとビジョンの共有が進みます。

なんでも、欧米のデザイン思考・システム思考の拠点として有名な大学・大学院では、このようなチームビルディングのやり方が効果を挙げているのだとか。いろいろなチーム編成法を試行してきた慶應SDMですが、この方法を今年は早速取り入れました。

上の写真は、学生たちが希望のチームに付箋紙を貼る瞬間。チーム決定の寸前まで、付箋紙の位置はぐるぐる動きます。

2013DproPh2-1_3

上の写真は、プロポーザーの企業等さまからそれぞれいただいたご説明に、真剣な表情そのもので聞き入る学生たち。

2013DproPh2-1_4

プロポーザーの企業等の代表の方々のプレゼンも熱が入ります。このプレゼンの結果が学生たちのチーム志願にダイレクトに影響するからです。

2013DproPh2-1_2

上の写真は、プロポーザー企業のうちの1社からいただいた、これまで当社が世に送り出してきた製品群のサンプル。折箱と言われるお弁当箱は、起源を平安時代にさかのぼる日本が誇る老舗産業。ただ最近は成熟が進んでいることから、業界の既成概念の打破を求めて、当社はプロポーザーに名乗り出ていただきました。社長がデザインプロジェクトの担当になるとおっしゃっていただき、まさに「サーバント・リーダーシップ」です。

デザインプロジェクトで生まれたソリューションや製品で、社長さまが気に入ってくだされば、即刻採用するとのこと。慶應SDMが発案したお弁当箱が店頭や車内販売に並ぶ日が来るなんて、想像しただけでわくわくしますね。

2013DproPh2-1_5

気持ちを込めた、迫真のプレゼンが続きます。都心の大規模インフラプロジェクトの紹介も飛び出しました。

2013DproPh2-1_7

チーム編成が終わったら、チームに分かれて企業等さまと輪になってお話し、インタビューやエスノグラフの段取りに取り掛かります。

そして、慶應SDMからの学生たちへのこの日のサプライズ・プレゼントは、「デザインプロジェクト・サバイバルキット」です。冒頭の写真はそのお披露目の瞬間。第2フェーズの門出をお祝いする意味も入っています。

2013DproPh2-1_8

サバイバルキットには、450枚の付箋紙、各色のマーカー、及びテープが入っており、あわせて模造紙や粘土などの配置場所を記した地図も入っています。補充はほぼ無限大。

これからは授業の時間の枠を超えて、いつでもどこでも大学院という地理的・時間的制約を超えて、システム×デザイン思考を24時間実践できるように、という親心です。がんばれ、学生たち。彼らが自分の翼で飛び立とうという意欲と情熱をわれわれは全力でサポートしたいと思います。



  1. 2013/06/02(日) 11:55:30|
  2. ワークショップ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

最新記事

プロフィール

toshiyasui

Author:toshiyasui
横浜市港北区日吉の大学院でポストシステム思考・ポストデザイン思考のイノベーション研究をしています。社会システムや政策デザインが主な関心です。

facebook

Toshiyuki Yasui

バナーを作成

これまでいらしていただいた方の数

記事のテーマ一覧

テーマ別にご覧になりたい方はここからどうぞ。

研究 (19)
ワークショップ (23)
メディア (1)
身辺雑記 (5)
その他 (2)
未分類 (1)

ソーシャル・アーキテクトの思考部屋へようこそ

慶應SDMの公開ワークショップOpen KiDS

集合知による社会課題のソリューションデザインはとても大事。新しい方法論を知の地平から見つけていたきたいですね

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

CustomRssReader

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR