ToshiYasuiBlog

慶應義塾大学大学院システムズデザイン・マネジメント研究科の教員である筆者が、ポストシステム思考・ポストデザイン思考の研究教育のさまざまな試みを自省しつつ、日々の振り返りとして書きつづる

構造化すること、思考バイアスを壊すこと、シフトすること

濱口さん

2週間以上経つが、いまだに興奮というか、頭の中のもやもやというか、思考と直感の渦がおさまらない。日ごろはアメリカ西海岸のポートランドで活動されている世界的ビジネスデザイナーの濱口秀司さんが、超多忙の日程を縫い日本出張中に、慶應SDMに特別講義をしに来ていただいた。5月10日金曜日の夜も更けてのことである。

普段は90分間で終わる講義が、一言も聞きもらすまいとぴーんと貼りつけた空気の中、3時間以上に及ぶ。USBフラッシュメモリーをはじめ、身近な製品サービスに限っても100以上関与されている不世出のイノペーターの講義に、慶應SDMの学生たちが喰らいついていくのだから壮観だった。

普段はメディアや本に出ない濱口さんだが、TED X Portland 2012や東洋経済の雑誌「Think!」誌の今年1月号でのインタビュー記事で、方法論の一部を垣間見せていただいている。

わたくしにとっても、ノンストップの3時間30分の講義が一瞬に思えるほどの感銘を受けた。講義の内容は多岐にわたったが、その中でも、ひとびとの思考パターンを構造化すること、そしてその構造を次々に仮説する2×2軸を使い、バイアスを崩すこと、そしてビジネス-テクノロジ-コンシューマの3面で発想をシフトさせていたくこと。この3つの切り口には特に感銘を受けた。

濱口さんの特別講義のあと、間髪いれずに濱口さんの方法論を使い、徹夜でワークした学生たちもいたとか。一見、禅の公案みたいなやりとりだが、イナヅマのような知的なやりとりが何回も教室を往復していたようだ。手前みそだが、慶應SDMでわれわれが実践している方法論とすごい親和性を感じた。ただただ、うれしかった。


  1. 2013/05/26(日) 13:57:20|
  2. 研究
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デザイン思考とシステム思考の間を目まぐるしく脳内で動くということ

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今日は、5/12日に行われた慶應SDMの一般向け公開イノベーション・ワークショップOpen KiDSの模様の概説を。
未来デザインワークショップがテーマの今回は、未来のスマホ、未来のデパート、ならびに未来のモビリティをどう設計するか、の3グループにそれぞれ分かれました。

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今回は2013年度に予定されているOpen KiDS4回の最初の回。慶應SDM委員長・教授の前野先生の「責任編集」の回。そこで、デザイン思考とシステム思考という、イノベーションを起こすためにどちらも不可欠な方法論をわざと対比し、両方のアプローチの違い、そして、両方の方法論をしなやかに行き来することで、発想のシフトが起こるということを体験していただきました。

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左脳は論理脳、右脳は感性脳、という学説もありますが、ほんとは脳は両方ともバランスよく使う。だから、左脳=システム思考に重点、右脳=デザイン思考に重点、というのはやや不正確な言い方かも知れません。他方、講義や演習にはエンターテイメントの要素もあります。そこで、今回は参加者のみなさまにそのことをきちんとご説明したうえで、「左脳的な」システム思考と「右脳的な」デザイン思考の双方のアプローチを対比的に体験していただきました。

上の写真は、システム思考で重視されるデータ調査と分析の一例。参加者の方が、未来のスマホの消費者ニーズの聞き取りを、慶應SDMのTAに早速行っているところです。

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デザイン思考におけるフィールドワークやエスノグラフィ、システム思考におけるデータ調査やデータマイニング。どちらもその根っこは、顧客と企業双方の思考バイアスのパターンを知るということでは。
上の写真は、アイデア・ジェネレーションの2つの方法論、すなわち自由発想法と強制発想法のうち、自由発想法の代表格であるブレーンストーミングでアイデアをどんどん発散させているところです。

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その後、出たアイディアを親和図法でグループにするのですが、その際、システム思考の色彩の濃い技法のひとつであるバリューグラフを使い、親和図法でまとめた、未来のスマホなどの価値を、作成したレイヤーごとに位置づけました。

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自分たちの生み出した新たな価値は、バリューグラフのどこのレイヤーなのか。そして、そこをどのようにシフトさせると新しいイノベーティブな価値への転換できるのか。はずむような会話の中にも真剣な表情が垣間見えます。

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グループ間をまわるワンポイント・アドバイスに思わず熱が入る白坂先生。ロケットを打ち上げるプロジェクトなどがよく例として出されるシステム思考、アップルやグーグルなどのアプローチがよく例に出されるデサイン思考、そのどちらがよいのか、ではなくて、人間が左右の脳をバランスよく使うように、やはり'システム×デザイン'思考=イノベーションなのですね。

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3部構成のワークショップの最後のパートは、ストーリーテリングとスキットのイノベーションに対して有する意義を勉強したあと、自分たちのグループがこの日提案したソリューションを1分間の'playback theater'で演じていただきました。下の写真は、とかく個別の移動空間と言われる車が、渋滞時にバーチャルにつながることで空間の楽しさを連帯できるようになる、というアイデアの即興劇。

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Open KiDSは、今年度このあと、8/25日、11/10日、2/23日の3回予定されています。申し込みは慶應SDMのHPで、各回の少し事前に応募サイトが開設され、抽選制です。今回も200人以上の方に応募していただいたのですが、会場のキャパから抽選で120人に絞らざるを得なかったようです。参加できなかった方、本当に申し訳ございませんでした。もしよろしければ、次回もぜひ根気強く応募していただけると大変にありがたいです。

Open KiDSは、オープンでフラットな場づくりを旨としています。
Open KiDSで使用した教材は、すべて慶應SDMのイノベーティブデザインセンター で公開されています。また、Open KiDS参加後も参加者の方々が、このスライドなどを使ってみなさまで実践
していただくことを願い、お勧めしています。そのために、フェイスブック公開グループも開設されていて、Open KiDSや他の場での活動の報告や意見交換の場としてご利用いただいています。

この'システム×デザイン'思考=イノベーションの試みが、ソーシャルイノベーションのための一種の運動化し、ネットーワークとなって広がっていき、自律的に、それぞれ孤立した点ではなく、面としての活動に盛り上がっていくことを期待しています。

Open KiDSの運営は、慶應SDMの教員・TA・学生たちのすべて無給ボランティア。他方で、昨年度の実績ベースでは、参加者お一人1回当たり、3,300円を超える費用がかかっているとのこと。付箋紙や模造紙代も結構かかりますしね。しかし、教育成果の社会的還元の見地から、今年度のOpen KiDSは実費もいただかず、完全無料化に踏み切ったとのこと。慶應義塾として有志の寄付は後日賛同者からありがたくいただくようですが、ぜひ、このような利他的かつ地道な活動が、どんどん他の場にも広がっていくといいな、と祈念しております。



  1. 2013/05/26(日) 12:05:31|
  2. ワークショップ
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レジリエンスを流行言葉だけに終わらせないには

ProfShimizu

慶應SDMの推奨俯瞰科目「社会システムのシステムズ・アプローチ」。この土曜日午後の隔週の講義では、頭でっかちにならないように、社会システムの多様さが体験として腑に落ちるように、多くの外部講師の先生においでいただき、講義やワークショップ付の演習を行っています。

上の写真は、本日ご講義いただいた、京都大学防災研究所の清水先生。東日本大震災をきっかけに、日本でもようやく注目を集めるようになったレジリエンス(強靭性、打たれ強さ、回復性)という言葉をキーワードに、レジリエンスを社会システムが確保するためには、ベースとしての参加型の政策システムが大事なこと、そしてレジリエンすは単なるハコものの拡充ではないこと、を情熱をこめて話していただきました。さすが、日本の新進気鋭のレジリエンスシステムの研究の第一人者。レジリエンスを単なるBuzzwordに終わらせないシステムマネジメントの講義に、学生たちは興味しんしんで聞き入っていました。

MsHayashi

当科目では、このような座学以外に、政策ワークショップも開催。この写真は、5/11土にいらしていただいた大手外資系証券のMDをされておられる林礼子先生のご講義。林先生はソブリンや公共ものの債券を中心に、債券起債市場の市場関係者としては知らぬ人はいない有名な方。さらに社会貢献活動や企業や社会のダイバシティ確保活動、そして障がい者の方へのボランティア活動にも熱心な取り組みで知られています。

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林先生のプレゼンのあと、日本の債券市場の最適ソリューションを考える、熱いワークショップを、デザインプロジェクトで学んだ手法を応用して、行いました。ワークショップのファシリテーションは教員ではなく、ボランティア学生とTAのみなさんです。みなさまの自主性に脱帽です。

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社会システムというintangibleでinvisibleなことが多いシステムのソリューションを提案するには、やはりfail fastの原則でどんどん提案していくのがベター。そのためのソーシャル・イノベーションの方法論を、慶應SDMの学生たちがどんどん学んでいる手ごたえを感じています。

  1. 2013/05/25(土) 15:54:11|
  2. 研究
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「見えるを援ける」のprototyping rapidly

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慶應SDMのデザインプロジェクト。この土曜日は、宿題になっていたprototyping rapidlyの報告会が最初。上の写真は「見えるを援ける」のテーマで、「眼がよくなるツボ押し機」のプロトタイプ開発過程の説明中。

「見えるを援ける」のほか、「慶應SDM大部屋の活性化」などのテーマで、2時間を超える白熱した発表会でした。
いや~、みなさんの枠外発想、楽しませてもらいました。笑った、笑った。

でも、TED XでのGoogle Glassのプロトタイプ過程のプレゼンを見ても、顧客と企業が協創してfail fastの原則の下で、どんどん枠外へ発想をシフトしていく「共感のためのプロトタイプ」「経験プロトタイプ」では、みながやっていることの本質は、Google Glassの開発過程と本質は同じなのではないか、とちょっぴりうれしく思う。ふふ。

以下も、「見えるを援ける」のプロトタイプのいくつか。メガネッぽいところにとどまっていないところが、何ともいい感じ。

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この日の講義・演習は、盛りだくさん。このあと、CVCAと欲求連鎖分析(WCA)、「引き算」フィールドワークの宿題発表(「家」と「会社」をそれぞれ1週間「引き算」=断捨離してしまった学生がいたのには驚いた)、storytellingの講義。

そしてスタンフォード大学のProf.Dr.Kurt Beiter による西海岸テイスト溢れる機械工学の講義・演習。土曜日の夜、one night assignmentのために徹夜してしまった学生グループもあったとか。

学生たちのデザインプロジェクトにかける熱意と集中力、素晴らしいなあと感動しています。

  1. 2013/05/19(日) 22:43:38|
  2. ワークショップ
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手をつなぐストーリーテリングを1分間の即興で

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慶應SDMの学生向けデザインプロジェクト。昨日土曜日のわたくしの担当はstorytelling。組織や社会システムを変革したり、創造性の喚起やデザイン思考のツールとしても最近脚光を浴びていて、オバマ大統領からハリウッド映画の脚本家まで駆使しています。

上の写真は、写真のお題にしたがい、即興で1分間のストーリーを語るというもの。時間制約のためとはいえ、かなりの無茶フリでしたが、意欲溢れる学生の中から、2人が立候補してくださいました。2人ともお見事!

お題は上の写真にも少し映っている「手をつなぐこと」でしたが、1人は手をつなぐことと社会の癒し、もう1人は手をつなぐことと安心・安全のシステムについてお話。素晴らしかったです! 熱心に演習していただいた学生のみなさん、本当にありがとうございました。共感できるストーリーを即興でお話していただたき、感動しました。
  1. 2013/05/19(日) 18:08:57|
  2. ワークショップ
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エスカレータでエレベータ・ピッチをやるワケ

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連休中にもかかわらず、慶應SDMの学生向けデザインプロジェクトは、3連休をびっしりつぶして邁進します。
5/4土は、冒頭、データ分析のノウハウについて、定量・定性、2軸の立て方など、わかりやすい概念を使い、
学生たちに理解を促します。2軸マトリクスも、やってみると深いですねえ。

上の写真は、エレベータピッチならぬ、エスカレータピッチの演習の様子。イノベーションに不可欠な即興の
代表格で、かつ、シリコンパレーの起業家には必須の武器といわれるエレベータピッチ。これを、大人数で
こなすべく、エスカレータでやってみたのは、慶應SDMらしいイノベーティブをおもしろがる気風ですね。

下の写真は、ワークショップに試行的に使い始めた大部屋にはマイクがないので、Fail Fast原則の実践で、
一台5,000円也の懐かしの拡声機をこの日から、授業用に使いはじめたところ。このノリもまた慶應SDMらしい
ですねえ。

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デザインプロジェクトをはじめ、慶應SDMの講義・演習はほぼ下の写真のようにビデオ撮りされ、
SDM e-learning systemをつうじて、予復習や遠隔学習に使われます。

連休返上で撮影に当たっていただいたSOIのスタッフのみなさま、本当にありがとうございます。

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次の演習は、Pugh Concept Selection。この方法論の始祖Stuart Pughの教えに忠実に、機械的に
評価点を加減点するのではなく、新しいデザインやコンセプトをevolvingに生むために活用します。下の写真は
Pugh Concept Selectionの評価軸を2番目、3番目、とどんどん続けて作っていっているところです。

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そして、因果ループの演習へ。StarmanやPeter Sengeが強調したように、因果の確かな手ごたえを探しながら
進みます。下の写真は、因果の組み立てに苦闘しているところ。

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あっ、あった! Reinforcing Loopを見つけて、声をあげる学生たち。

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そして、イノベーションの加速に果たすimprovisationの重要性について講義。Playback Theaterや
Elevator Pitchなどの手法を実践しつつ、なぜ'システム×デサイン'思考に即興が不可欠なのか、
みなで演習しながら確認しました。下の写真は、起業家役と投資家役を交互に変わりながら行った、
エスカレータピッチの演習風景。

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そして、三田の家芝の家のご主宰をはじめ「まちの居場所」の研究等で有名な坂倉先生から、「引き算」のフィールドワークのご紹介と講義。

「引き算」のフィールドワークとは、日常生活で不可欠なものをひとつ、わざとやめることで、その大切さや
五感の変化、そしてそこから見えてくる情景などについて、自らのエスノグラフを作るワーク。
下の写真は、志願者学生による、「見る」を引き算したワークのデモンストレーション。

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学生さんたちには、1週間の「引き算」ワークが宿題として出た模様。さて、どのような報告が次のDProで
あるでしょうか。慶應SDMは連休中もイノベーション中です。

  1. 2013/05/05(日) 18:16:16|
  2. ワークショップ
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横浜市港北区日吉の大学院でポストシステム思考・ポストデザイン思考のイノベーション研究をしています。社会システムや政策デザインが主な関心です。

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